アストロ球団

たけくまメモにおいて、アストロ球団についての記述があった。

アストロ球団。この作品は、人生に影響を与えかねないくらいの迫力を持っている。
ムチャクチャな描写を指差して笑って読むような評価を見受けられがちな同作だが、それをアストロ球団の全てにしてしまうのは勿体無すぎることじゃないのか。
野球の試合なのに死者続出、「かたわ」や「どめくら」と連呼といった強烈なインパクトと時代性が大きな魅力であるのはもちろんのことだが、本気を注ぎ込んで魂でつむぎだした作品であることが一目瞭然である部分に浸らねばならない。

武術を野球に組み込む発想の時点で激しさ全開なのだが、かの有名な人間ナイアガラなど、拳法がどうのこうのという枠を超えた迫力がある。これを魂で読まないでどうする。
笑える笑えないなんて問題じゃない。凄いんだ。
この人間ナイアガラというのがどんなプレイかといえば、一塁ベースに向かうバッターランナーの伊集院球三郎に対して、守備陣(7人)が一列になって上空へ飛び上がり、両足のドロップキックを食らわせてKOを狙うという技である。
打球はピッチャーライナーなんで、捕っていればアウト。しかしそれを叩き落し、ファーストに送球した上でタッチに行く流れで暴行している。ライナーを捕れば、もしくはファーストを踏めばそこでアウトなんだが、戦うことが目的で野球をやっているので、タッチが当然です。
なんかよくわからないけど、言葉をいくら費やしても足りないくらいのパワーを持っている。
連載中に作者がどんどんノッてきて、漫画としての構図と迫力が飛躍的に増していき、それを追っているうちに作品へと吸い込まれてしまうのである。

テレビ朝日は、そんなアストロ球団をどのように扱うのだろう。
アストロ球団の中で好きなコマの言葉を借りるなら、あまりの意外さに声もなしだ。
もし実写であるならば、いっそのことデビルマン那須監督を地獄から呼び戻して、惜しみない金を突っ込んだ上で最狂作品に仕上げるくらいの根性を見せていただきたい。一作品完全燃焼の心があれば、できる。
那須監督は、完成したら一気に老ければよい。
この手の原作つき作品は、ふざけたものを作ろうとしてはいけないと考えている。
本気でアストロ球団に向かい合おうとしたけども、よくわからないものが出来上がってしまった、というくらいが、観る側としてちょうどいいのである。